NORI AND HIRO トレイル紀行

アメリカ南西部 バックカントリーの旅

ジョン・ミューア トレイル 2/4
Wilderness Trip of the Sierra Nevada and Surrounding Areas Next

マリー・レイクの眺望が楽しめるセルダム峠(3,313m)を超えると,トレイルはハート・レイクやサリー・キーズ・レイクを通って,一気に1,000m下る。その辺りにミューア・トレイル・ランチがあり,バックパッカーの食料を預かるサービスをしている。ここには,車道がなく,ラバで荷物を運ぶために1個につき40ドルかかる。ラバの往復が週に一回であるため,ゆとりをもって送っておく必要がある。これより南,トレイルに隣接する食料補給地点はなく,横道にそれ人家のある地点まで往復で2日かかる。好みの地点での食料補給を希望するならば,パッカーと呼ばれる馬とラバで人や荷物を運ぶ業者がいる。料金は500ドル以上するが,指定した場所と日時に食料を届け,ごみを持ち帰ってくれる。

トレイルの南半分には3,600mを超える峠が5つある。
最初の峠のミューア・パス(3,644m)には,花崗岩でできた避難小屋,ミューア・ハットがある。
峠の両側の2つの湖,ワンダ・レイクとヘレン・レイクは,ジョン・ミューアの二人の娘の名である。

峠を下ったところ,レ・コンテ渓谷に,ビショップ峠に通じるトレイルの分岐点がある。
我々は,いつもここでパッカーの食料補給を待つ。パッカーは,夕方食料を届け,近くにキャンプして翌朝帰る。

マーサー峠(3,682m)とピンショット峠(3,688m)へは,険しい道のりが続くが,峠からの壮大な眺めが疲れを吹き飛ばしてくれる。
峠から見下ろす大平原を思わせる場所でのキャンプは,眺めはいいが,風が強く,夜の冷え込みが厳しい。
多少距離を延ばしても森林地帯に入るようにしている。

アローヘッド・レイクやレイ・レイクス周辺のキャンプに適した場所には,ベア・ボックス(フードボックス)と呼ばれる鉄製の大きな保管庫が備えられている。
ハイカーの食料を熊から守るためのものである。この辺りのブラック・ベアは,臆病で人を襲うことはないが,一度人間の食べ物の味を知った熊は凶暴になる。
ベア・ボックスのない場所でキャンプする場合は,携帯用のフードキャニスターを持っていくことを義務付けられている。

グレン・パス(3,652m)を超えて降りたビデット・メドウは,蚊の多い場所だ。虫よけスプレーで追い払うが,食事時に蚊の大群に襲われるのが一番困る。
顔にスプレーはつけたくないし,食事中は顔にかぶるネットが使えないからだ。蚊はここだけでなく,トレイルの草原や森林地帯全般に多い。

フォレスター・パス(4,023m)は,トレイル最大の難関といわれるほど厳しい。3,500mを超える峠をいくつも越し,酸素の薄さに慣れたはずだが体が思うように動かない。
時々立ち止まって呼吸を整えながら登る。スルーハイカーにとってここがクライマックス,ここまで来たならば,全行程踏破は目前で成功を確信できる。峠を下れば,ホイットニーの雄姿を眺めることもできる。


ホイットニー山 フォレスター峠付近から
パッカー
↑ミューアハット        ↓ヘレンレイク

 ↑フードロッカー

       フードキャニスター→

ホイットニーは,見る角度により山の形が違う。フォレスター峠を越えた平原からの眺めは8分の1にカットされたショートケーキのようで,中心が高く周りが低く傾いたような形をしている。

東側の町,ローンパインからは,鋭く切り立った岩山のように見える。


↑ローンパインから 中央がホイットニー 左がローンパイン・ピーク

ホイットニー山頂よりも,手前にあるローンパイン・ピークが高く見え,「どれが,ホイットニー山?」とアメリカ人からも聞かれる。

ギターの形をしたギター・レイク周辺は,ホイットニー登頂を翌日に控えたバックパッカーたちの最終キャンプ地となる。
ここに早めに到着して十分な休養を取り,早朝の出発に備える。

ギター・レイクとホイットニー(4,418m)の標高差は約1,000m,4時間ほどで登頂できる。
山頂は大きな岩がごろごろしたところで,石造りの避難小屋がある。山頂に立つと,東のインヨー山脈,その下のオーエンス・バレー,ローンパインの町やハイウェイ395号線や車が見える。
数日間バックカントリーに浸ってきた者には,道路や車も懐かしく感じる。

ホイットニー山頂からのローンパインを見下ろす ギター・レイク 山頂の避難小屋
● 規則と規制
ジョン・ミューア・トレイルをはじめ,周辺の山々に入る場合,パーミットと呼ばれる許可証を国立公園局や森林局からもらわなくてはならない。
たいていの場合はキャンプを要するハイキングに限られるが,ホィットニー山の場合は日帰りでもパーミットを必要とされる。
ホイットニー山の日帰りハイキング(往復16時間)は1日100人,キャンプは50人に規制されている。
入山時に,ゴミの持ち帰り,水の浄化,食料の保管の仕方,キャンプファイヤーの仕方,トレイルの歩き方など細かく指導を受ける。すべてのルールを自分と自分のパーティみんなに守らせることを誓ってサインすることで入山がOKになる。
これらのルールで日本人になじみの薄いのが食料の保管方法である。キャンプするときの食料は,ベアキャニスターというプラスチックの円筒型のケースに入れて保管する決まりがある。
熊などの野生動物を守るための手段で,人間の食料の味を覚えた熊は処分されなければならないからだ。
これらに違反した場合は罰金を科せられることがある。


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